[587]
【藤原定家の直筆本発見】 「和歌の家」冷泉家が伝授してきた「神髄」とは |
□投稿者/ 管理人 院生(592回)-(2024/04/19(Fri) 17:38:55)
|
「歌聖」とたたえられた藤原定家による古今和歌集の直筆注釈書「顕注密勘」が、「王朝の和歌守(うたもり)」とされた冷泉家で見つかった。古今集の歌の解釈や言葉の意味を後世に伝えた「古今伝授」に関わる資料の一つとみられ、100点超の冊子・古文書とともに一つの箱に収められていた。専門家は、和歌の家に伝わった古今集や古今伝授の「神髄」を物語る重要な資料群とみなしている。
あわせて読みたい 【速報】京都の冷泉家から藤原定家直筆の古今和歌集の注釈書発見 専門家「国宝級だ」 冷泉家、後継者に野村渚さん 第24代当主・故冷泉為任さんの孫 「冷泉家の古今伝授は藤原俊成、定家から守り伝えられてきた教え。今回、(歴代当主が教えを継承してきた)勉学の跡を示すおびただしい数の資料が見つかった」。冷泉家住宅(京都市上京区)での記者会見で、同家の第25代当主で時雨亭文庫の冷泉為人理事長はそう切り出した。
資料群は江戸時代、定家の子孫になる当主たちが一生に一度、朝廷の許可を得て開封した箱に収められていた。開封は古今伝授の際に限られ、直近では1896(明治29)年になる。一昨年10月に調査を始めると、顕注密勘をはじめとした冊子60冊、古文書58点が箱に入っていた。
古今集は10世紀に成立した最初の勅撰和歌集。日本的な四季の美意識や心情表現などが現れているといわれ、古今伝授によって歌道が継承された。古今伝授は戦国武将・細川幽斎から伝わった内容が、後水尾天皇を経て、皇族や公家らに受け継がれた「御所伝授」がよく知られる。だが、歌の言葉を天皇家の「三種の神器」と結びつけたり、秘伝を紙に書いて渡す「切紙伝授」がシステム化していたりしたため、「権威的」「形骸的」との見方もある。
一方、古今伝授はほかに諸流があり、今回見つかった顕注密勘をはじめ、同封の冊子や古文書と合わせて見通すことで、和歌の家「冷泉流」ならではの伝承の内実や特徴が見えてくる可能性が高い。
同志社大の大山和哉助教(近世和歌文学)は「権威化した歌の解釈ではなく、より実践的に本質を捉えようとしたことが分かるのではないか」と展望している。
実際、今回の資料群には歴代当主の古今集の「研究ノート」が含まれ、18世紀の当主・為村は熱心な学びの跡を残す。大きな文字で古今集の原文を写した余白に、言葉をどういうイントネーションで読むかといった家に伝わる説や自身の考えを細かな文字でびっしりと記し、当主の研さんぶりをよく示しているという。
|
|