京都市中心部の地価の上昇基調が強まってきた。大阪国税局が1日発表した路線価で、市内の上昇率は前年を大きく上回り、東山区では12%を超えた。主因の一つはインバウンド(訪日客)の急増に伴うホテル進出の活発化だ。新型コロナウイルス禍を機に沈静化した市内のホテル開発が、再び不動産取引の主役に躍り出ようとしている。
清水寺や八坂神社など観光客に人気の社寺を多く抱える東山区では、今年に入って外資系ホテルの開業が目立つ。7月26日にはシンガポール系の高級ホテル「バンヤンツリー・東山 京都」(52室)が、霊明神社近くにオープンする。今春には英ホテルチェーン大手IHGの最上級ブランド「シックスセンシズ京都」も開業した。
両ホテルを運営するワールド・ブランズ・コレクションホテルズ&リゾーツ(東京)は、客室料金をいずれも1室1泊20万円前後からに設定しており、河本浩社長は「京都のホテル供給数は多いが、富裕層向けは十分ではない。特徴あるラグジュアリー(豪華)ブランドのホテル誘致で成長を目指す」と話す。
歴史的な円安を背景に、訪日客の消費は一段と力強さを増す。京都を昨年訪れた外国人旅行客は約600万人で、観光庁によると消費額は3100億円に達した。外国人客の延べ宿泊数は4月に前月比20・3%増え、70万泊近くに達した。物価高などで25・7%減った国内客とは対照的だ。
9月には米ホテル大手ヒルトンの旗艦ブランド「ヒルトン京都」が中京区で営業を始め、来年夏にはシンガポール資本の「カペラ京都」が東山区で開業を予定するなど、コロナ禍前の2010年代後半に見られた外資系ホテル進出ラッシュの第2幕の様相も漂う。
「『ハイアット』や『フォーシーズンズ』など既存のラグジュアリーホテルがけん引し、一つのブランドエリアが形成されつつある」。京都の地価動向に詳しい不動産鑑定士の村山健一さん(大和不動産鑑定)は、東山区のホテル開発の現状をこう分析する。
老朽化などで撤退を余儀なくされたホテルを大手資本が買収し、改修した上で再開業する動きも活発化している。ホテルを新しいブランドに生まれ変わらせる「リブランド」だ。帝国データバンク京都支店は「京都ブランドの強さが根底にあり、運営が難しくなっても新たな買い手がすぐに現れる」と指摘する。
英IHGは6月、京都駅近くの旧アランヴェールホテル京都(下京区)のリブランドを発表した。シックスセンシズ京都、ANAクラウンプラザホテル京都に続く3カ所目で、「ホリデイ・イン京都五条」として25年初めに再出発させる。
貸し会議室国内最大手のティーケーピー(東京)も下京区のホテルを7月23日に「アパホテル京都五条大宮」に改修し、京都で初のホテル運営を始める。河野貴輝社長は「京都では観光の需要に押されてビジネス用の施設が足りていない。リブランドで両方の需要を取り込む」と自信を示す。
コロナ禍前まで市中心部の不動産取引の主役だったホテルは、供給過剰感からマンションやオフィスにシフトする動きも見られた。訪日客が押し寄せる中、ホテルが再び地価をけん引する構図が当面続く可能性がある。
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