幕末などの京都で文人として活動した町人の姿を伝える特別展「文人墨客(ぶんじんぼっかく) 鳩居堂の幕末明治」が、京都市歴史資料館(上京区)で開かれている。当主・熊谷家ゆかりの書画や古文書を中心とした43件を通じて、天然痘の予防や飢饉(ききん)の救済にも力を入れた町人の振る舞いに光を当てる。
鳩居堂は江戸時代に京都で創業された商家で、薬種や書画用品を扱った。幕末や明治に当主だった熊谷直恭(なおやす)・直孝の父子は、文化人や志士との交流がよく知られる。
文人画家の富岡鉄斎ら4人の作品をまとめた巻物「蓮心翁祝寿合作巻(れんしんおうしゅくじゅがっさくかん)」は、75歳の直恭を祝って贈られた。鉄斎の絵は直恭が子どもに天然痘の予防接種「種痘」を施しているさまを描き、これを広めようとした直恭の先例を伝える。
会場には1833年に始まった天保の飢饉を受け、困窮者のために設けられた「救小屋(すくいごや)」の旗や、鳥羽・伏見の戦い(1868年)で被災した人への支援内容を記した帳面もあり、社会活動を率先した町人の一面を示す。
鳩居堂は明治期に宮中御用のために東京・銀座に店を設けたが、京都府知事を務めた北垣国道のための特注の墨もみられ、京都で商いを続けていった歩みも分かる。
入場無料。13日まで。午前9時〜午後5時。
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