「華道」「手もみ製茶」も登録無形文化財に
文化審議会は18日、新たに重要文化財として「明治のたばこ王」と呼ばれた実業家の別邸跡「長楽館」(京都市東山区)など6件を指定するよう文部科学相に答申した。
長楽館は1909(明治42)年、円山公園(東山区)の隣接地に、たばこの製造・販売で財をなした村井吉兵衛が建てた。「長く楽しめるように」と伊藤博文が命名し、国内外の賓客が招かれた。平安女学院の聖アグネス教会(上京区)を手がけた米国人建築家ガーディナーが設計した。
気品に満ちたれんが造りの洋風住宅建築は、地上3階、地下1階建て。中央の吹き抜け階段に面して半地下、中2階、中3階を設け、巧みに天井高を確保した空間演出は機能性も備える。内部のしつらえは各階、一室ごとに異なり、和洋折衷の中にも中国やイスラム建築の要素が溶け込む。
洋館のたたずまいを生かし、3階を除く各部屋は現在、カフェやレストランとして営業するほか、映画のロケ地に用いられたり、文化的なイベントにも力を入れたりしている。
吉田重人総支配人は「今回の指定を通じて、文化的な施設の歴史を発信することができる。さらに100年先へ、保存・公開していければ」と話している。
また、同日の文化審議会答申では、草花を伝統的な技法で生ける「華道」を新たな登録無形文化財とする内容も盛り込まれた。
華道は室町時代以降、多様な生け花の技法や様式を生み出しながら人々の生活に浸透した。各流派は伝統的様式の稽古を通じて精神性を追究しつつ美意識の継承を図っており、芸術的価値が高いと判断された。
技術継承に取り組む保持団体に認定される「日本いけばな伝統文化協会」(大阪市)の会長で、京都を拠点とする都未生流の大津光章家元は「命ある植物を媒体に自分を表現したり人を癒やす芸術は世界中でいけばなだけと言ってもよく、登録は意義深い。多くの人にいけばなの良さに気付いてもらえたらうれしいし、各流派の伝承を大切に継いでいきたい」と語った。
ほかに、手作業で煎茶や玉露などを作る「手揉み製茶」も登録の答申に含まれた。茶道具を用いて茶葉に圧力を加えて水分を排出後、針のような細長い形状などに整える伝統的な技法で、生活文化面における意義が深いと評価された。保持団体には「手もみ製茶技術保存会」(静岡市)を認定する。登録無形文化財は今回の2件を入れると、計6件になる。
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